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小 宮 公 園 に て　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 3 / 4

弁天池を後にして大谷沢に沿った雑木林の小道（かわせみの小道、木道）を気持よく北へ 　　　たどって行く道中、木道の脇には下草に混じってあちこちでヤブランの群落がつつましい花 　　　を咲かせていた。公園の中心部で右折して大谷沢から別れ、園の東の縁を回るように斜面を 　　　登って行くと名も知らない雑草の間に可憐なヤマハギの紅紫色の花を散見する。やがて明る 　　　く開けた草地の斜面に出て、これを上がり切るとその外縁が公園の北の境界だった。この草 　　　地が広がる周辺一帯がひよどり山だ。市道を挟んで北西側にひよどり山中学校がある。 　　　　草地広場の東側周辺には桜が植えられているが、この季節に一番目を引くのはキバナコ 　　　スモスの花だ。 私は見慣れた花そのものはともかく、幅２メートル、長さ１０メートルほどの 　　　叢の上を舞う多数の蝶の姿に引き付けられた。 近寄って活発に飛び回るオレンジ色の蝶を 　　　観察するとツマグロヒョウモンである。 そして最初の段階で十数匹はいたと思われる個体は 　　　全て雄だったのだ。 「はて？　雌は居ないかな？」と羽先の黒い模様が鮮やかな雌を探して 　　　いると草地の東端にある小さコスモス畑の方向から一匹の雌が飛んできた。 しかし、落ち着 　　　いて花の蜜を吸う間も無く、直ぐ数匹の雄に追われて飛び去ってしまったのだ。 この時期、 　　　公園の周辺では雌雄の発生個体数に偏りがあったのかも知れない。 　　　　私は蝶の観察にかまけている間にカミさんの姿を見失ってしまった。辺りを見回して少し下 　　　がった草地の縁、雑木林寄りの桜の下に立っているのに気付く。 上を見上げて首をかしげ 　　　ている様子だった。近付いて「どうかしたの？」と訊くと、「この桜、咲いているんじゃない？」 　　　と言うのだ。 私が驚いて木を見上げると、確かに木の北側半分の枝先にかなりの数の花が 　　　咲いていたのである。花の大きさはよく判らないが、色は淡紅色、一重咲きだ。木肌は山桜 　　　に似ているように思われた。この季節に咲く可能性のある桜として私は十月桜しか知らない。 　　　但し、私の記憶に拠れば花は白色のものが多く、かつ八重咲きである。さて、この桜は何だ 　　　ろう？　と私も首をひねってしまった。たまたまウオーキングで通りかかった地元の年配女性 　　　に訊ねてみたが、「桜の種類は知りません。でも、よく狂い咲きするんですよ、この木は」 と 　　　言って笑っていた。私たちは詮索を諦め、外縁通路をたどって公園南西部の開けた景観を 　　　楽しみながら雑木林ホールに向った。 　　　　私は雑木林ホールに戻ると早速管理所係員に草地広場で見た桜の件を訊ねてみる。する 　　　と、「咲いていましたか。狂い咲きですね。うちではあの桜を大山桜ではないかと見ています」 　　　との見解だった。 「そうですか。勉強になりました」 と礼を言ってホールを出る。 公園を後に 　　　する時、ツクツクボウシの大合唱はまだ続いていた。(15:15) 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （２００８年 ９月末） 　　　　　　　　　　　　　　雑木林の外縁に広がるススキ　（公園南西部のオープンスペースにて）

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