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和田堀池のカイツブリ／後記　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　 　　 2 / 2

置き去りを食った幼鳥は親鳥の後を追うのは諦めたようで、水際近くの水草や落ち葉溜り 　　　を嘴でつつくような仕種をしながら西岸沿いをゆっくり北へ移動し始めたのである。私は来た 　　　道を引き返す形でその様子を眺めながら付かず離れず後を追う。やがて池の北西端、水面 　　　にコウホネが広がる場所に来て間もなく、私は初めてこの幼鳥が水に潜るシーンを目撃した。 　　　潜水時間はまだ短いが、水から出てきた時の表情は先刻ピーピー鳴きながら親に甘えてい 　　　た可愛い雛のそれとは異なり、意外に精悍なハンターの雰囲気を湛えている。何を狙ってい 　　　るのか判らないがしばらくコウホネの群落の間で潜水を繰り返していた。 　　　　そのうち近くの水辺の手摺に年配の男性がやって来て、偶々そばに寄ってきた１羽のオナ 　　　ガガモ（雌）にパン屑らしきものを投げ与えたのだ。それをオナガガモから数メートル離れた 　　　位置で見ていたカイツブリの幼鳥は驚くほどの俊敏さで泳ぎ寄り、オナガガモの鼻先でその 　　　餌を奪い去った。 それからコウホネの群落近くまで戻ってゆっくりその餌を呑み込んだので 　　　ある。 私は「こいつ、なかなかしぶといじゃないか」 と感心したものだ。 しかし、二つ目の餌 　　　をと再び岸辺に泳ぎ寄った時、今度はオナガガモがこれを察知して幼鳥を嘴で攻撃して追い 　　　立て、餌に近寄らせなかったのである。 　　　　反撃を食らった幼鳥はその場から逃げ出し、再び池の南側へと泳ぎ去って行った。順調に 　　　成長しているかと多少気に懸かっていたカイツブリの子育てだが、その幼鳥が大きな水鳥と 　　　餌の取り合いを演じて見せてくれた。 一人前に潜水・餌探しも出来るようにもなっている様 　　　子である。この日の観察結果から、私は幼鳥の一人立ちはもう心配無いだろうと言う印象を 　　　持ったのだった。 　　　　遠ざかるカイツブリから目を離し、時計を見ると既に１５時を回っている。最後にもう一度と 　　　カワセミの観察ポイントに足を運んでみたが、この日はめぐり合わせが悪かったのであろう、 　　　結局カワセミ君の姿を見ることなく和田堀池を後にすることになった。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（２００９年　１０月） 　　　　　　　　　　　　　　　　　　スナップ集　(２)　＜　画像をポイントして下さい　＞

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