＜ 吹 き よ せ ＞

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異常気象の年　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 1 / 2

平成１６年々末、恒例のイベントでこの年の世相を表象するとして選ばれ 　　た一文字は「災」（わざわい）だったそうだ。 「災」には天災もあれば人災も 　　ある。この文字を選んだ清水寺の貫首は恐らく「あらゆる災い」を念頭に置 　　いていたものと推察するが、私はその選定の謂れを確認するでもなく、安直 　　に「天災」の意に解釈したものだ。 何しろ、この年は大袈裟に言えば「天変 　　地異」が重なった年であった。 度重なる集中豪雨や観測史上最多の台風 　　上陸、新潟県中越地震など、自然災害によって各地にもたらされた被害は 　　甚大である。 これに火山の噴火も加わったのだから、多くの国民は改めて 　　自然の恐さを思い知らされたのではなかろうか。特に中越地震の被害状況 　　は、さほど遠からず起こるとされる大地震に対する官民の警戒感をいやが 　　上にも高める効果があったようだ。 内政、外交、経済などに無関心ではい 　　られない問題が山積する状況下ではあるが、「災」の文字が選ばれたのは 　　「むべなるかな」という印象を持ったのである。 　　　集中豪雨や台風による風水害は、ある程度は毎年のように発生している。 　　しかし、この年のように、前線が繰り返し特定の地域に長期間停滞して記録 　　的な降水をもたらしたり、複数の台風が勢力を保ったままほぼ同じ様な進路 　　で日本列島を縦断して各地に激しい風水害をもたらしたりした事象は矢張り 　　「異常気象」の一端と捉えるべきであろう。ところが、気象がらみの自然災害 　　の多さはさておいて、誰もが感じているように、平成１６年は気候そのものが 　　年間を通してかなり異常だったようだ。私なりの感覚では「暖冬」、「早い春」、 　　「長い猛暑の夏」、「暖かい晩秋と初冬」等々がキーワードになるように思う。 　　簡単に言えば、年間を通して総じて気温が高かったということだが、その高 　　さ加減が大きければ、もはやこれも異常気象と呼ぶ外無い。私が身の回り 　　の動植物の営みを眺めただけでも、気候の異変が影響していると見られる 　　現象が幾つも認められた。それらをピックアップしてみると次のようになる。 　　・暖冬： 　　　　前年末の暖かさを引きずり、穏やかな年明け。大寒、立春の前後にそれ 　　　　ぞれ幾分冷え込んだが１～２月は概ね気温は高めに推移。 そんな中、 　　　　1/20頃から庭の椿が咲き始めた。例年なら開花は早くても３月に入って 　　　　からなので、その異常な早さに驚く。 　　・早い春： 　　　　2/10頃、例年より １週間ほど早く庭のサンシュユの開花が始まる。2/ 　　　　14に春一番が吹き（前２年はそれぞれ3/15、3/03）、以後順調に気温 　　　　が上昇。２月末～３月初旬に一時寒さ戻るが、中旬以降は４月の気温 　　　　に。 桜（ソメイヨシノ）の開花は 3/18で平年より１０日早い、観測史上 　　　　２番目の記録となる（１番はＨ14年の 3/16）。 庭のモッコウバラ、ツル 　　　　バラなどの開花も概ね例年より１０日ほど早まる。 　　・長い猛暑の夏： 　　　　東京の真夏日連続日数が４０日（7/06～8/14）の新記録に（従来記録 　　　　はＨ07年の37日）。7/20には都心部で観測史上最高となる３９・５℃を 　　　　記録。 また、１シーズンの真夏日日数も７０日の新記録に。 　　　　　庭のモクレンが盛んに狂い咲き（７月）、例年より格段に多い揚羽蝶 　　　　や蝉の羽化が観察された（７～８月）。 　　　　　　　　　　　　　　　　目次へ　 　　　　　　　　　　　　　　　　次頁へ